慢性膵炎は急性膵炎が慢性化したもののように思えますが、基本的に急性膵炎と慢性膵炎はメカニズムの違う異なる病気です。急性膵炎は自己の膵液によって膵臓自体が消化されてしまう病気ですが、慢性膵炎は慢性の炎症によってすい臓の細胞が破壊され、細胞が繊維化して機能が低下していく病気です。
そのため、急性膵炎のほとんどの場合で障害なく治癒するのに対し、慢性膵炎は細胞が繊維化して機能が低下したまま回復することはありません。急性膵炎と違って、一方通行の病気といえます。
慢性膵炎の患者数は年々増加傾向にあり、2002年に厚生労働省が行った調査では、慢性膵炎の患者数は全国で4万4700人と推定されています。この患者数は10年前に行った調査結果と比べると倍増しており、食生活の変化などによって確実に慢性膵炎の患者数が増加していることが伺えます。
急性膵炎と慢性膵炎は異なる病気ですが、密接なつながりがあるのも事実です。軽度や中等度の急性膵炎は障害を残すことなく治癒しますが、重症急性膵炎の場合は症状が治まってもすい臓に大きな障害が残ってしまい、そのまま慢性膵炎に移行するケースが多々みられます。
また、急性膵炎を繰り返し発症している場合も、すい臓の細胞が次第にダメージを受けて慢性膵炎になりやすいと考えられています。
慢性膵炎は長い時間をかけて徐々に進行するため、現れる症状も病気の進行に伴って変化します。始めのうちは強い腹痛や背部痛が現れますが、次第に痛みが軽減され、最終的には痛みを感じなくなります。一見自然治癒したかのように思えますが、実際は痛みを感じることができないほどすい臓が破壊されていることを意味します。