膵臓癌の治療は大きく分けて、手術療法、抗がん剤治療、放射線治療があり、癌の進行度合を表すステージ分類によって治療法を選択します。それぞれの特徴について知っておきましょう。
膵臓癌の治療方針は癌の進行度合を表す病期(ステージ)によって異なりますが、基本的には日本膵臓学会が定めた「膵癌診療ガイドライン」を参考にして、患者の状態(年齢・既往歴など)や意向を反映しながら方針を決めていきます。
「膵癌診療ガイドライン」では以下のような膵癌治療アルゴリズムが示されています。
膵臓癌の治療法は大きく分けて、外科的治療(手術)、抗がん剤治療、放射線治療の3つがあります。完治が期待できるのは癌組織を物理的に取り除く外科的治療ですが、転移している場合は癌組織を取りきれないため行うことができません。
外科的手術ができる場合を「手術適応」といい、手術適応かどうかが大きな分かれ道となります。膵臓癌は早期発見が難しく、発見時には8割の患者が転移が認められるステージ4であるため、手術適応となるケースはあまり多くないのが現状です。
外科的切除手術が行えるのは、遠隔転移や主要な血管、膵外神経叢への浸潤がないことが条件となり、ステージ4aまでは手術によって癌を取り除ける可能性があります。
手術適応とならない場合は、抗がん剤や放射線による治療が行われます。抗がん剤と放射線を組み合わせた化学放射線療法を行う場合も多く、手術後の再発防止のために補助治療として行う場合もあります。
癌が膵臓とその周辺の組織やリンパ節にとどまってはいるものの、主要な血管や膵外神経叢に浸潤している場合は、遠隔転移の可能性が否定できないために、手術療法ではなく化学放射線療法が適応となります。
遠隔転移が認められている場合には、治療範囲が広範囲に及ぶために化学療法の適応となります。現在のところ、抗がん剤での根治は期待できませんが、治療技術の向上によって生存率の向上とQOLの改善につながっています。
膵臓癌の完治が期待できる唯一の治療法は、癌組織を物理的に取り除く手術療法となります。しかし、膵臓癌は早期発見が非常に難しく、手術療法が受けられるのは全体の15〜20%程度の患者に限られています。
すい臓は胃や十二指腸のほか、肝動脈や門脈など主要な血管に囲まれているため、膵臓癌の外科的手術は癌の中でも手術が難しい癌に分類されます。膵臓癌に対する切除術式は、癌がすい臓のどこに発生したかで異なります。
癌が膵頭部にできた場合、膵臓の頭部のほか、十二指腸や胃の一部、胆のう、胆管を取り除く「膵頭十二指腸切除術」が行われます。この術式は膵臓癌の中で最も多いのですが、消化管などの大がかりな再建が必要なため、患者負担が非常に大きいと言えます。最近では胃を切除せずに温存する「全胃温存膵頭十二指腸切除術」が行われています。
癌が膵体部や膵尾部にできた場合は、膵体部や膵尾部のほか、脾臓も併せて摘出する「尾側膵切除術」が行われます。この術式は消化管の切除を伴わないために臓器の再建もなく、患者負担は少ないと言えます。
癌が膵臓全体に広がっている場合は、膵臓すべてを摘出する「膵全摘術」が行われます。この術式の場合、膵臓を失うことでホルモンや消化酵素の分泌機能も失われてしまうため、術後はインスリン注射などが必要になります。
膵臓癌の手術をもっと詳しく
膵臓癌は早期発見が難しく、多くの場合で手術適応とすることができません。手術ができないということは癌が転移しているという事であり、その場合は抗がん剤治療が行われます。
また、手術できたとしても再発してしまった場合には再手術が困難な場合がほとんどであり、その場合も抗がん剤治療が行われます。
外科的手術や放射線治療は限られた部位に対して行う治療ですが、抗がん剤治療の効果は全身に及びます。そのため、癌の遠隔転移が確認された場合には抗がん剤の適応となります。
残念ながら現在の抗がん剤で膵臓癌の根治を期待することはできませんが、治療技術と効果は年々向上しており、腫瘍が小さくなったり、癌の増殖スピードが抑えられることで、生存率の向上とQOLの改善につながっています。
抗がん剤は癌細胞の増殖を抑える反面、正常な細胞の分裂にも悪影響を与えるため、副作用は避けて通ることができません。以前の抗がん剤は副作用が非常に強く、患者負担が非常に大きい治療法でした。
しかし、副作用を軽減する薬の研究や、副作用を抑えて治療効果を最大化する治療法の開発が進んだことで、副作用による患者負担は以前に比べて軽減されています。
膵臓癌の抗がん剤治療をもっと詳しく
放射線治療とは、X線やガンマ線などの電磁波を癌細胞に照射し、癌細胞のDNAを破壊することで増殖を抑える治療法です。近年、放射線治療の技術は格段に進歩しており、従来の放射線放射に比べて強いエネルギーを照射することができる「粒子線治療」や「陽子線治療」などが開発されています。
放射線治療は癌細胞に対して放射線を照射する際、周辺の正常細胞にもダメージを与えてしまうため、いかに癌細胞に狙いを定めて強いエネルギーを照射するかが治療効果を決めるポイントとなります。
現在行われている放射線治療は「3D-CRT(三次元原体照射)」や「IMRT(強度変調放射線療法)」が主流となっています。これはCT(コンピュータ断層撮影)による三次元画像で癌組織を正確に捉え、多方向から放射線を照射することで、以前に比べると格段に治療効果が上がっています。
ただし、放射線治療は一回当たりの時間は短いものの、週5日の治療を5〜6週間通院して行う必要があるため、患者負担は大きいと言えます。
膵臓癌の放射線治療をもっと詳しく
膵臓癌の治療を受ける場合、患者は症例数の多い専門病院や医師を選ぶべきです。症例数が多いほど治療経験も多く、より最適な治療法が選択できるからです。
膵臓癌だと診断された場合、多くの患者は気が動転して治療を急いでしまいますが、可能な限りセカンドオピニオンとして他の医師の診断や治療方針を聞くようにしましょう。
セカンドオピニオンを聞くという事は、現在の主治医を疑うという事ではありません。治療法に絶対はありませんので、治療法に他の選択肢があるのかどうか、現在示されているものが正しいかどうか、再確認も含めて聞くことが望ましいと言えます。
セカンドオピニオンを申し出て主治医の機嫌を損なうのではないかと躊躇する患者も多くいますが、セカンドオピニオンを求めるのは患者の権利であり、よい医師はセカンドオピニオンにも耳を傾けられます。自分の治療方針を押し付けてくるようであれば、よい主治医であるとは言えません。
治療後に「他の選択肢があったのではないか」と後悔したり、疑念を持っても手遅れです。自分が納得して治療を受けるためにも、セカンドオピニオンを活用することをお勧めします。