膵臓癌は進行が早いにも関わらず初期症状がほとんどなく、8割近い患者が手術できない進行癌として発見されるなど、非常に恐ろしい癌といえます。早期発見のために膵臓癌の症状をチェックしておきましょう。
膵臓癌は進行が早いのとは対照的に、症状が乏しく発見が非常に難しい癌です。明確な痛みが現れれば病院を受診して発見されるのですが、初期の膵臓癌ではほとんど症状が現れず、比較的早期に膵臓癌が発見された患者さんのうち、15%はまったく自覚症状がなかったという調査結果もあります。
膵臓癌が進行すると、腹痛や食欲低下、体重減少、腰痛、背部痛、黄疸などが現れるようになります。しかし、これらの症状は膵臓癌に限ったものでないため、これだけで膵臓癌と診断する事はできません。
また、このような日常起こり得そうな症状が自分に大したことないと思い込ませ、病院受診の機会を遅らせてしまい、結果として膵臓癌の早期発見を難しくしている原因になってしまいます。
膵臓癌に限らず、急性膵炎や慢性膵炎などの膵臓の病気は、膵臓の機能低下による共通した急性、または慢性の症状を引き起こします。一時的に治まったとしても、病気は確実に進行していきますので、速やかに病院を受診することが大切です。
比較的早期に膵臓癌が発見された段階で、患者が自覚していた症状を以下に示します。
一番多い症状は腹痛であり、腰痛や背中の痛みも起こりがちです。しかし、いずれも日常起こりやすいものであるため、腹痛が起こったからといって膵臓癌を疑うのは難しいことです。
しかし、割合は多くないものの腹痛などの具体的な症状が現れる半年以上前にそれまで好きだったコーヒーやワイン、タバコが嫌いになるといった嗜好の変化が現れることもあります。
どれも特徴的な症状ではないために早期発見の指標とするのは難しいですが、膵臓癌患者の6〜8割が糖尿病を合併していることから、糖尿病と診断された際には膵臓癌も疑って検査することをお勧めします。
次は膵臓癌の具体的な症状について示します。膵臓になんらかの障害が発生すると、激痛が急激に現れたり、繰り返す痛みが慢性的に現れるようになります。また、膵臓のどこに癌が発生するかによっても現れる症状は異なります。
急性膵炎や慢性膵炎、膵臓癌など膵臓の病気はなんらかのきっかけで急激な激痛や吐き気などが現れることがあり、その多くは飲酒や脂肪分の多い食事の数時間後に起こります。
このような症状はしばらくすると治まることもありますが、治ったと安心せず病院を受診することが大切です。膵臓癌の急性症状には以下のものがあります。
また、膵臓の炎症により数日かけて以下のような症状が現れることもあります。
慢性膵炎や膵臓癌の症状は初期にはあまり現れず、徐々に腹痛や体のだるさ、便の異常が現れるようになります。これだけでは「胃腸の調子が悪いだけ」と思われがちで、病院を受診しない人もたくさんいます。
しかし、胃腸障害が長く続く場合は一度病院で検査を受けるようにしましょう。膵臓癌などで慢性的に現れる症状には以下のものがあります。
慢性膵炎や膵臓癌がかなり進行し、膵臓の機能が損なわれると以下の症状が現れるようになります。
膵臓癌は膵臓のどこに癌が発生するかによって、症状の現れやすさが異なります。比較的早く現れる部位もあれば、自覚症状が現れた時にはステージ4の進行癌になってしまう部位もあります。
膵臓癌で症状が現れやすいのは主膵管や胆管付近にできた場合です。この場合、膵炎のような症状が現れたり、胆管が圧迫されて黄疸が現れるようになります。逆に現れにくいのは主膵管から離れた部位となります。症状の現れやすい部位、現れにくい部位を以下に示します。
症状が現れやすい部位
@主膵管付近
A膵臓内の胆管付近
症状が現れにくい部位
B膵尾部
C膵野(辺縁部)
D副膵管付近
E副乳頭が開口している側の膵頭部主膵管付近
F膵鉤部(膵頭下部)
膵臓癌は癌のできる部位によって症状の現れる時期や内容が異なります。なかでも最も現れやすいのが、十二指腸付近にできる膵頭部がんです。逆に最も現れにくいのが膵尾部がんで、癌が相当大きくならないと症状が現れません。
膵臓癌と診断された患者さんが感じていた自覚症状には、腹痛や黄疸、腰痛、背部痛、体重減少などがあります。このほか、便通の変化、だるさ、吐き気などもあります。
膵頭部に癌ができた場合の症状
膵頭部に癌ができると、6割に腹痛と黄疸、5割に体重減少の症状が現れるようになります。なかでも一番の特徴は「黄疸」です。黄疸とは胆汁に含まれるビリルビンという黄色の色素がなんらかの理由で血液中に増え、皮膚や粘膜に沈着することをいいます。
そのため、黄疸になると皮膚や白目が黄色くなります。膵頭部には胆管が通っているため、がんが大きくなって胆管を圧迫し、胆管が狭くなったり、閉塞することで黄疸が発生します。
ただし、必ず黄疸が起こるというものではなく、胆管から離れた所にがんができた場合は、黄疸が現れなかったり、発症時期が遅れることがあります。
腹痛は膵臓の中を通っている主膵管が癌のために圧迫され、狭窄あるいは閉塞するために膵液が膵管の中にたまり、周囲を圧迫するために起こります。
体重減少は上記のように膵管が詰まることで膵液が十二指腸に流れなくなるために消化不良を起こし、栄養の吸収ができなくなるために起こります。この状態が続くと次第に食欲不振や吐き気、嘔吐などが現れるようになり、体重が減少するようになります。
膵体部や膵尾部に癌ができた場合の症状
膵体部や膵尾部に癌ができた場合は症状が現れにくく、現れた時にはすでにかなり進行している事がほとんどです。症状として最も特徴的なのは背中の痛みです。
膵臓はとても薄い臓器なので、癌に侵されるとすぐに膵臓を飛び出し、背中側の神経に癌が浸潤します。そのため、背中に強い痛みが発生します。
そのほかには、腹痛や食欲不振、体重減少などがあります。どれも珍しいものではなく、背中の痛みも筋肉痛と勘違いされることがあります。
しかし、そのまま放っておくとどんどん膵臓癌が進行しますので、上記のような症状が現れた時にはっきりとした原因が思い当たらない場合は病院で検査を受けてみる事が大切です。
糖尿病と膵臓癌の関係が注目されており、糖尿病患者が健常人に比べて極めて高い率で膵臓癌を発症しやすいことがわかっています。また、癌が発症した後に糖尿病が悪化する患者さんが8%程度いることもわかっています。
膵臓は血糖値をコントロールするホルモンを分泌する臓器であるので、糖尿病の発症や悪化は膵臓癌の発症を疑う大きな目安になるといえます。膵臓癌は初期症状が少なく、かなり進行しないと症状が現れにくいため、日頃から血糖値を意識することが大切です。
特に、食べ過ぎによる体重増加などの原因がないにも関わらず、糖尿病が発症したり、悪化した場合には、膵臓の何らかの異常を疑う必要があります。