膵臓癌は早期発見が非常に難しい癌ですが、腫瘍が小さなうちに発見することができれば、その後の生存率や予後にも大きな影響を与えます。膵臓癌を1cm以下で見つけるにはどんな検査を受けたらよいのでしょうか?
どんな癌にも言える事ですが、可能な限り早期発見できればそれだけ生存率が高く、予後も良好な結果が得られます。これまで膵臓癌の早期発見の目安として、腫瘍径2cm以下での発見が推奨されてきました。
しかし、腫瘍の大きさと生存率の関係を調査すると、腫瘍径2cmの予後が必ずしもよい訳ではなく、腫瘍径1cm以下の生存率と大きな違いがあることがわかりました。
膵臓癌の腫瘍径が1〜2cmで発見できた場合、その後の5年生存率は50%程度であるのに対し、1cm以下で発見できた場合の5年生存率は80%という報告があり、1cmの違いがその後の予後にどれだけ影響するのかがわかります。
そのため、現在では腫瘍径1cm以下で発見することが目標となっています。
腫瘍径1cm以下で発見するのが理想といっても、腫瘍径1cm以下で発見することは非常に困難です。膵臓癌は初期症状が非常に乏しい癌として知られており、腫瘍径1cm以下の患者のうち、40%が無症状であるとされています。
健康診断で気軽に行える腫瘍マーカー検査(CA19-9、CEA)でもはっきりとした上昇が見られず、上昇する割合は半分にも満たない状況です。
早期発見のきっかけとなるのは、超音波検査やCT検査で主膵管の拡張や膵のう胞を発見し、膵臓癌を疑って精密検査をすることです。超音波検査やCT検査による腫瘍径1cm以下の描出率(検査画像で映し出せる割合)はけっして高いとは言えず、超音波検査で17〜70%、造影CT検査で35〜75%とされています。
そのため、上記検査で癌腫瘍を発見するというよりも、主膵管の拡張や膵のう胞が確認できた段階で、より精度の高い検査(EUSなど)に切り替えて調べる事が膵臓癌の早期発見には大変重要です。
膵臓癌が疑われるような膵管の拡張や膵のう胞が認められた場合、精密検査にはEUS(超音波内視鏡)やMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影検査)と呼ばれる検査が行われます。
EUSは内視鏡の先端に超音波装置がついている検査器具で、口から胃の中に入れたのちに超音波で膵臓の状態を調べる検査です。EUSを用いた場合、腫瘍径1cm以下の描出率は85〜100%とされており、膵臓癌が疑われる場合はEUSを積極的に行う必要があります。
EUSによって腫瘍が発見された場合には、EUS-FNA(EUSガイド下穿刺吸引細胞診)によって腫瘍部位の細胞を採取し、癌かどうかの確定診断を行います。また、検査によって主膵管や分岐膵管に狭窄や拡張が認められた場合は、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査)によってさらに検査を行います。
精密検査で膵臓癌が見つからなかったとしても、膵管の拡張や膵のう胞が見つかった場合は膵臓癌のリスクが否定できないため、定期的に画像診断を行う必要があります。膵臓癌は初期症状が乏しい上に進行が速いため、定期的に検査を受ける事が早期発見には極めて重要です。