膵臓癌の生存率は癌の進行度を表すステージによって大きく異なります。ステージによって治療法が異なるため、外科的手術など完治が期待できる治療が受けられる場合や転移の有無によって生存率は大きく変わります。
ほとんどの癌に共通していることですが、すい臓がんの完治が期待できる治療方法は病巣部を手術によって摘出することです。がんだけを取り除くことはできないので、がんの転移が疑われる周囲のリンパ節や臓器も一緒に取り除きます。
このがん摘出手術はすべてのすい臓がんに行えるわけではなく、進行の度合い(ステージ)によっては手術が行えないこともあります。そのため、膵臓癌と一言で言っても、がんのステージによって生存率も余命も大きく異なります。
手術によってがんの摘出が行えるのはステージ1、2、3で、ステージ4aでは一部の場合摘出が可能、4bでは不可能とされています。
これは、がんがリンパ節や周囲の組織、離れた臓器に転移している場合、可能な範囲で摘出しても延命効果がないと考えられているためです。この場合は、抗がん剤治療や放射線治療などを行います。
すい臓がんは初期にはほとんど自覚症状がなく、しかもがんの進行が早いために、早期発見が非常に難しいという特徴があります。また、膵臓自体が小さいため、がんが膵臓外に出やすく、周囲のリンパ節や臓器に転移しやすいという特徴もあります。
そのため、すい臓がんが発見された段階ではすでに進行していることが多く、摘出手術が行えない事例が多々あります。実際、すい臓がんの切除率は20〜40%と低い数字になっており、手術で切除できたとしても再発率が高く、すい臓がんの予後は良好とはいえないのが現状です。
がんの治療では「5年生存率」という判断基準がよく用いられます。5年生存率とは手術などの治療を行った後、5年の間にがんの再発がなければ「この治療したがんは完治した」と考え、その後にがんが発生した場合は治療したがんとは別のがんと考えます。
5年後までに100人中20人が生存していれば、5年生存率は20%ということになります。この5年生存率は、すい臓がんが見つかった時点からの余命を考える上でも役立ちます。
すい臓がんは早期発見が難しく手術を行えないことも多くありますが、手術が行えたとしても3年以内に再発する可能性が極めて高く、5年生存率は10〜20%程度とされています。
膵臓癌の5年生存率(10〜20%)はすべてのステージの患者を合計したものですが、摘出するすい臓がんの大きさが2cm以下で周囲への浸潤やリンパ節への転移が認められないステージ1の5年生存率は約60%となっており、以前に比べてやや向上しています。
また、がんが膵管上皮に限局しているステージ0の5年生存率はほぼ100%が期待できます。しかしながら、すい臓がんの約8割がステージ4の最も進行した状態で見つかるのが現状で、ステージ1までに見つかるのは全体の2%に満たず、早期発見は極めて稀といえます。
すい臓がんは癌が初期のうちに治療をすることが極めて重要で、早期発見できれば完治も十分に可能となります。
なお、日本膵臓学会の過去20年間の治療成績によると、ステージ2の5年生存率は44%、ステージ3で24%、ステージ4aで11%、ステージ4bで3%となっています。