膵臓は胃や十二指腸と接しているほか、膵臓内を胆管が通っているため、膵臓癌が大きくなるとこれらを圧迫して様々な障害を引き起こします。膵臓癌の閉塞性黄疸と消化管閉塞について知っておきましょう。
膵臓といえば膵液のイメージがあるため、膵臓癌が進行することで胆汁が原因となる黄疸が起こるイメージはあまりありません。そもそも胆汁は肝臓で作られており、肝臓の下に位置する胆嚢に貯められています。
食事をすると胆嚢が収縮し、胆汁が胆管を通って十二指腸に放出されるのですが、この胆管は膵臓の膵頭部を通り、十二指腸の胆汁の出口である十二指腸乳頭につながっています。
そのため、膵頭部の癌腫瘍が大きくなると、膵臓内の胆管が圧迫されて狭窄し、胆汁の流れが悪くなることで黄疸が発症します。
この胆管の狭窄を解消する方法として、内視鏡を使って狭窄している胆管内にプラスチックチューブやステントを挿入し、胆汁の流れ道をつくるという治療が行われます。このような治療を内視鏡的胆道ドレナージ術(EBD)といいます。この治療法はさらに体外に胆汁を排泄する治療法と、体内に流す治療法の2つに大別されます。
胆汁を体外に排泄する治療法は内視鏡的経鼻胆道ドレナージ術(ENBD)と呼ばれ、細いプラスチックチューブを内視鏡を使って胆管の狭窄部に通し、反対側は鼻の穴から外に出します。こうすることで胆汁を鼻の穴を通して体外に出すことができるようになります。
この治療法の場合、チューブが胆汁によって流れが悪くなったり閉塞したとしても、チューブを洗浄することができるというメリットがありますが、いつも鼻からチューブが出ており、長期間続けるには向いていないというデメリットもあります。
胆汁を体内に流す治療法は内視鏡的胆道ステント留置術(EBS)と呼ばれ、プラスチック製もしくは金属製のステントと呼ばれるチューブを、内視鏡によって胆道の狭窄部に挿入し、胆汁の流れ道を確保するというものです。
この治療法の場合、ENBDのように鼻からチューブが出ているなどの違和感がないため、患者の生活に与える影響がほとんどないというメリットがあります。その一方でステントが閉塞してしまった場合には、内視鏡によってステントを交換する必要があります。
膵臓は胃や十二指腸と接するように位置しているため、膵臓の癌腫瘍が大きくなると胃や十二指腸を圧迫するようになります。特に膵臓癌の中でも一番多い膵頭部癌が大きくなると、胃から十二指腸にかけての消化管を圧迫するため、食事をしても食物を胃から腸に流すことができず、嘔吐するようになります。
このような状態を胃流出路閉塞(GOO)といいます。食事ができなくなってしまうと経口での栄養摂取ができなくなるほか、患者のQOLが著しく低下するため、早急な対応が必要となります。
以前の標準的な治療法は、外科的手術によって胃と小腸を直接つなぎ、食物が胃から十二指腸の狭窄部を通ることなく、小腸に直接流れ込むようにするものでしたが、患者負担の大きい治療法でした。
しかし、現在は内視鏡による治療技術の向上によって、患者負担の少ない内視鏡での治療が多く行われています。治療方法としては、消化管の狭窄部に内視鏡を用いてガイドワイヤーを挿入し、その後狭窄部までステントを送り届けます。そして狭窄部内でステントを広げて狭窄している消化管内部を広げ、ステントはそのまま留置します。