膵臓癌は早期発見が難しい上に進行が早く、死亡率が高い恐ろしい癌であるといえます。そのため、膵臓癌にはどのような原因があるのか理解し、少しでもリスクを減らす努力をすることが大切です。
膵臓癌は早期発見が難しい癌の1つであり、発見時には手術できないほど進行していることが少なくありません。そのため、原因となる危険因子を調べてなりやすいグループを特定することは、早期発見に非常に重要となります。
膵臓癌の原因として、生活習慣や膵臓の病気、遺伝的要因などがあります。生活習慣では喫煙や肥満、お酒の飲み過ぎが危険因子とされており、タバコやお酒の摂取量が多いほど発症リスクが高くなるとされています。
膵臓癌を発症した患者さんの既往歴で最も多いのは糖尿病で、全体の17%を占めています。慢性膵炎から膵臓癌を発症する患者も多く見られます。これらはいずれも膵臓の病気であり、膵臓の障害と癌の発症に関わりがあることが裏付けられています。
遺伝的要因としては、家族が膵臓癌や膵炎になった人は膵臓癌になりやすいことがわかっており、遺伝性があると考えられています。
膵臓癌の危険因子は調査や研究によっていくつか挙げられていますが、高い確率で発症する特定の危険因子の発見には至っていないのが現状です。
膵臓癌の危険因子と考えられるものを1つでも持っている人を検査しようとすると、その対象者数は膨大な数になり、すべての人が精密検査を受ける事は不可能です。そのため、危険因子を複数持っている人は定期検査を受ける事が望ましいとされています。
慢性膵炎全体のうち、60%がアルコール過剰摂取によるアルコール性慢性膵炎です。慢性膵炎は膵臓に炎症が繰り返し起こることで、徐々に膵臓の外分泌腺細胞が破壊され、壊れた細胞の代わりに線維細胞が増えて硬くなり、徐々に膵臓の機能が低下していきます。
また、慢性膵炎では膵臓の内分泌機能も低下するため、糖尿病を発症しやすくなります。慢性膵炎は明確な膵臓癌のリスクファクターであり、慢性膵炎から膵臓癌を発症する率は、膵炎ではない人に比べて13倍高かったというデータもあります。
膵炎の発症から3年以内が膵臓癌の発症リスクが高いとされており、膵炎と診断された場合は膵臓癌の可能性も考慮して検査を進める事が大切です。特に、慢性膵炎の患者で背部痛や腹痛、黄疸、体重減少、糖尿病の悪化などの症状が認められた場合は、精密検査をする必要があります。
また、膵臓には嚢胞(のうほう)と呼ばれる水を含んだ腫瘍ができることがあります。膵臓に限らず、肝臓や腎臓でも嚢胞ができることがありますが、そのほとんどは心配のいらないものです。
しかし、膵臓にできる嚢胞の中でもIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)と呼ばれる嚢胞は、放置すれば膵臓癌を発症するリスクが高いことがわかっています。
糖尿病は膵臓癌のリスクファクターであり、糖尿病患者の膵臓癌発症リスクは糖尿病ではない人に比べて約2倍高くなることがわかっています。
糖尿病は血糖値をコントロールするホルモン分泌の異常によって起こります。そのホルモンは膵臓で分泌されているため、ホルモン分泌が低下するということは、膵臓の機能低下を意味します。
そのため、糖尿病の発症は膵臓癌の1つのサインと考え、血糖コントロールの悪化や体重減少、食欲不振、家族歴のない糖尿病の発症などの場合は、膵臓癌を疑って精密検査をする必要があると考えられています。
肥満などの体重過多は膵臓癌の危険率を増加させることがわかっており、肥満に至る食生活(高脂肪・高カロリーな食事など)もリスクファクターとして関係しています。
高脂血症や肥満は糖尿病の発症リスクを高めることになり、それが膵臓癌のリスクをさらに高めてしまうことになります。特に若い頃に肥満だった場合は、発症リスクが高くなることがわかっています。
肥満かどうかを判定する基準にBMIがあり、以下の式で計算します。
BMI=体重(Kg)÷身長(m)×身長(m)
BMIは男性で25以上、女性で30を超えた場合に肥満と判定されますが、BMIが30以上の20歳男性では、BMIが正常値の男性に比べて膵臓癌の危険率が3.5倍も増加することがわかっています。
膵臓癌患者の家系を調べてみると、その3〜9%には血縁者に膵臓癌患者がいる事がわかっています。また、家族に患者がいる場合、本人が発症するリスクはいない人に比べて2〜3倍になると言われています。
さらに、家族内に膵臓癌患者が多いほど、本人の発症リスクも高くなる傾向にあります。家族に2人以上膵臓癌患者がいる場合は「家族性膵がん」と定義されます。
また、膵臓癌になりやすい遺伝的な病気として、遺伝性膵炎、家族性大腸腺腫ポリポーシス、ポイツ・ジェガース症候群、家族性異型多発母斑黒色腫症候群などの遺伝性膵がん症候群もあります。
膵臓癌は早期発見が難しいため、家族や親族に膵臓癌患者がいる場合は自分がなるリスクが高いと考え、定期的に検査を受けることをお勧めします。
タバコをたくさん吸うヘビースモーカーの場合、タバコを吸わない人に比べて2〜3倍も膵臓癌になりやすいとされており、1日40本以上喫煙する人の場合、死亡率は3.3倍にもなります。
また、いつも飲酒をしていて喫煙もしている人は、非喫煙者に比べて4倍以上もなるリスクが高くなることもわかっています。
適量の飲酒は体によい効果を与える事もありますが、大量の飲酒は膵臓に負担をかける事になり、8年以上にわたって大量の飲酒を続けた場合は、そうでない人に比べて膵臓癌の発症リスクが1.2倍になるとされています。
大量の飲酒は膵臓癌の原因の1つである慢性膵炎の発症にもつながりますので、適量の摂取を心掛けるようにしましょう。