膵臓癌の治療方針を決める上で、癌の進行度合を表すステージ分類は非常に重要です。膵臓癌は早期発見が難しく、発見時には8割がステージ4と診断されます。ステージ分類とはどのような基準で行うのでしょうか。
すい臓がんの治療方針を決める上で重要なのは、がんがどのくらい進行しているかということです。一般的にがんの進行度を「ステージ」として分類しますが、すい臓がんの場合は日本膵臓学会によって以下の5つのステージに分類されています。
なお、ステージ表記は通常ローマ数字のTUVWで表しますが、以下はわかりやすく1234で表しています。
ステージ0
浸潤のないがん(非浸潤がん)
ステージ1
すい臓がんの大きさが2cm以下のもので、がんが膵臓内部に限局されており、リンパ節への転移がない。
ステージ2
すい臓がんの大きさが2cm以下で膵臓内部に限局しているが、病巣に近い第1群のリンパ節転移がある。または、すい臓がんの大きさが2cm以上であるが、がんが膵臓内部にとどまっており、リンパ節転移がない。
ステージ3
すい臓がんの大きさが2cm以下で膵臓内部に限局しているが、病巣からやや離れた第2群のリンパ節転移がある。または、すい臓がんの大きさが2cm以上であるが、がんが膵臓内部にとどまっており、第1群までのリンパ節転移がある。または、がんの浸潤が膵内胆管・十二指腸・膵周辺組織のいずれかに及ぶが、リンパ節転移はないか、第1群までのリンパ節転移に限られる。
ステージ4a
すい臓がんの浸潤が膵内胆管・十二指腸・膵周辺組織のいずれかに及び、第2群のリンパ節転移がある。または、がんが膵臓周囲の血管に及んでいるが、リンパ節転移はないか、第1群までのリンパ節転移に限られている。
ステージ4b
すい臓がんが膵臓周囲の血管に及んでおり、第2群のリンパ節転移がある。または、病巣から離れた第3群のリンパ節転移があるか、離れた臓器に転移がある。
膵臓癌のステージ分類は、日本膵臓学会の「膵癌取扱い規約」内にある以下の表に基づいて分類されます。ステージの分類は「TNM分類」と呼ばれる方法で行われ、「T」は癌の大きさや深さ、広がりを、「N」はリンパ節への転移の有無、「M」は他の臓器への遠隔転移の有無を表します。
Tis:非浸潤癌
T1:腫瘍径が2cm以下で膵内に限局したもの
T2:腫瘍径が2cmを超え膵内に限局したもの
T3:がんの浸潤が膵内胆管、十二指腸、膵周辺組織のいずれかに及ぶもの
T4:がんの浸潤が隣接する大血管、膵外神経叢、多臓器のいずれかに及ぶもの
N0:リンパ節転移(−)
N1:1群リンパ節のみに転移(−)
N2:2群リンパ節まで転移(+)
N3:3群リンパ節まで転移(+)
M0:遠隔転移を認めない
M1:遠隔転移を認める
膵臓癌は早期発見が難しく、発見時には患者の8割がステージ4と診断されるのが現状です。ステージ4とは上記のステージ分類方法からもわかるように、リンパ節転移や周辺臓器、血管への浸潤が認められ、遠隔転移が認められる、もしくはその可能性が極めて高い状態を言います。
膵臓癌の完治が期待できる治療は、病巣を完全に取り除く手術療法ですが、癌が遠隔転移してしまっている状態では手術が行えません。実際、手術療法によって癌の摘出が行われるのはステージ3までであり、ステージ4aでは一部の場合で摘出が可能、ステージ4bでは不可能とされています。
そのため、ステージ4の膵臓癌は抗がん剤治療、もしくは放射線治療によって治療が行われ、腫瘍を小さくすることで延命や症状の緩和を図ります。これらの治療で腫瘍が小さくなり、手術療法が適応となる場合もごくまれにあります。