完治が期待できる膵臓癌の治療は、癌に侵された部位を取り除く手術療法です。しかし、この摘出手術はすべての患者が受けられるわけではありません。
摘出手術は癌が再発しないことを目的としているため、膵臓以外の臓器に転移していることが認められる場合は、手術を行うことができません。
膵臓癌は早期発見が難しい癌であるため、膵臓癌が発見された段階で他の臓器への転移が確認されることも多く、手術が受けられるのは全体の2〜3割しかおらず、多くの患者は手術を受ける事ができません。。
膵臓癌は治療前にCT検査やMRI検査などの画像診断を行って他の臓器への転移がないかを調べます。それらの検査によって転移が認められず、さらに膵臓周辺の血管への浸潤も認められない場合、「切除可能膵がん」と診断されます。
一方、画像診断では他の臓器への転移が認められないものの、癌組織が膵臓周辺にある主要血管(腹腔動脈・上腸間膜動脈・門脈など)の半周以上を取り巻いている事が確認できた場合は、癌が血管内に浸潤していると考えられ、遠隔転移している可能性も高い事から「切除不能膵がん」と診断されます。
しかし、どうしても判断しにくい状況もあります。それは画像診断で遠隔転移は認められないものの、膵臓周辺の動脈に癌組織が半周以下だけ接している場合です。その場合は血管への浸潤を判断することは困難であり、「ボーダーライン膵がん」と診断されます。
膵臓癌の手術はどうやるの?臓器の温存は可能なの?
ボーダーライン膵がんは米国のNCCN(全米総合がん情報ネットワーク)のガイドラインで以下のように定められています。
ボーダーライン膵がんの治療は現在も臨床研究を行っている最中であり、はっきりとした治療法が決まっている訳ではありません。血管への浸潤も否定できず、手術しても癌組織を取りきれない可能性があるからです。
そんな中で、少しでも手術による摘出の成功率を高めるため、抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせて行う治療法が検討されています。現在検討されている治療法としては、まず始めにジェムザールとTS-1を用いた抗がん剤治療を実施し、それと併せて放射線治療を行って癌を小さくし、それから摘出手術を行うものです。
この治療法によって、以前は手術対象外だった患者でも手術適応になるケースが多くなっています。
膵臓癌を早期発見できた場合の生存率はどれくらい?